Keep running, Run faster.

毎日コツコツ、走ってます。山とか、街とか、トラックとか

2018 草津スパトレイル 当日 後編

第2エイドを出発すると、今回のレースで最高峰の弁天山まで登り、そこからは鏑木さんのいうところの「極上の下り」のトレイルがはじまる。実際に走ってみると、たしかに、着地した時の感触はすごくいいし気持ちがよいのだが、なによりも暑い。暑すぎる。もう少し気温が低ければ疲労感も違ったと思うのだが、この時期の草津としては異常な暑さに心身ともに疲弊し、ゴールできるのだろうかと不安がよぎる。後方からは38キロコースの選手がものすごい勢いで、僕を追い抜いていく。その速さに惑わされることなく、自分のペースを守ることにひたすら努めた。というか、この時点で38キロコースの選手についていこうなどという、気力はすでになく、身体を一歩でも前に進めることで精一杯だった。なんとか第3エイドに到着する。

第3エイドには足湯があり、僕は果物を口にいれると、シューズを脱ぎ、ソックスを脱ぎ足湯に浸かった。とても熱く長く浸かっていられるような湯ではなかったが、疲労した脚が少しでも軽くなることを祈って、湯に浸かった。f:id:keiichi423kun:20180722211017j:plain

時間のロスを気にしながら適度に脚を休めると、エイドを出発した。実際、足湯に浸ることでどれくらいの回復効果があったのか定かではないが、「足湯に浸かった」という事実で、疲労が少し回復したような気もした。人間の思い込みというのはなかなか馬鹿にできないものだ。

ここからはアップダウンが続き、50キロを過ぎたあたりで一度トレイルが終了。ロードを走った先には、いよいよこのレースの最大の難所である「世立八滝の階段登り」が待っている。ロード区間が終わり実際に階段の下の到着し、見上げた時は正直、「山道であればどこにでもありそうな階段だな」という印象しかなかった。ただ、実際に登りはじめてからは、本当きつかった。今まで体験したことのない辛さだった。何よりも脚があがらない。ここまで来る中で、全身の疲労のピークはとっくに超えていて、階段を登っているとというより、断崖をよじ登っているような感覚だった。少し気を緩めると後ろにひっくり返ってしまいそうだった。もちろん、他のランナーも辛そうに登っているのだが、僕は階段の途中で脚があがらなくなり、休憩をはさみながら登っていったので、かなり順位を落としてしまった。

身体が動かなくなると、心も折れ、もうとにかく大きな怪我をせず完走できればよいという気持ちにもなってきた。時に這いつくばるようにして、急階段を登り、ついに世立八滝の前に立った。一言、素晴らしかった。自然のエネルギーのようなものを感じ、観ているだけで、疲労が和らぐような気がした。暑さのため、このまま滝壺に飛び込んでしまいたい衝動に駆られ、必死にその気持ちを抑えながら、脚や首筋に冷水をかけ、まだ残っている階段を登っていった。f:id:keiichi423kun:20180722210804j:plain

やっとの思いで階段を登りきり、なんとか脚を動かしながら第4エイドに向かって脚を動かした。

階段を登っている時にはもう、走れないと思っていたのだが、不思議なもので、走ろうと思えば走れてしまう自分に驚いた。第4エイドに到着すると、鏑木さんがランナーを出迎えいて、僕も鏑木さんにハイタッチをした。それだけでとんでもなく嬉しかったのだが、エイドで少し長めの休憩をとっていると鏑木さんが話しかけてくれ、少しだけ会話を交わし、写真をとってもらった。このエイドの補給食も素晴らしく美味しかったが、鏑木さんとの会話がまた走り出すための最高のエネルギーになったような気がする。

ここから先の記憶はもうあまりなく、難所は超えたはずだから、怪我だけはしないように確実にゴールをしたいという気持ちで走ったと思う。疲労のため、一瞬の気の緩みが大きな怪我につながってしまうので、一歩一歩、集中し、確実に前に進むことだけを心がけた。ロードを走るのとは違う難しさをラスト15キロで改めて感じた。

最後のエイドに着き、やはり果物とコーラを口にすると、小さく「よしっ」と気合を入れてゴールへと向かった。16時を過ぎると気温も下がり、いくぶん走りやすくなった。コースの左側に距離表示の看板が立っていたので、僕は左側ばかりをみて走った。65k、66k、67k、68k、69k、、、

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たしかに距離表示では、確実にゴールが近づいているのだが、先の見えない山中をひたすら走っているため、ほんとうにこのレースが終わるのだという確信が持てなかった。ゴール地点が山の麓にあれば、山降りをしている時に集落がみえてり、街がみえてきたりと、ゴールに近づいているの感じることができる。しかし、今回は最後の最後まで平坦なトレイルを黙々と走らなければならなかった。それでも、あと少しだという気持ちで仄暗いトレイルを走っていると、前方が少しひらけ、柔らかい光が差し込んできた。

時刻はそろそら17時近くになろうとしていてた。子供の頃、夏休みに外で遊んだ時の記憶が蘇ってきて少し感傷的な気持ちになった。走路は、トレイルからアスファルトにかわり、ロード区間に入ると、やっと帰ってこれたと思った。それと同時にもうこれで終わってしまうのか、という名残惜しさのようなものも感じた。

草津スキー場に設けられたゴール会場がみえ、アナウンスでは僕の名前が呼ばれていた。

ああ、ほんとに終わるのだと思った。最後の階段をゆっくり登っていった。

 

72キロ、ゴール。

 

振り返ってみればほんとうに楽しい72キロだった。ほんとうに走りきれるのか、レースの直前からゴールまで不安だったが、運営スタッフや、地元の人の応援のおかげで走りきることができた。温泉好きの僕にとって四万、草津という場所も最高だった。また、ぜひ出たいと思える大会になった。

 

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